トランスジェンダー追悼の日に寄せて

今日、11月20日は「トランスジェンダー追悼の日」です。
差別、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムなどによって殺されたトランスジェンダーへの追悼の日です。
これらの方々には、自ら死を選んだ方々も含まれます。
自死であっても、差別に、ヘイトスピーチに、ヘイトクライムによって殺されたことには違いありません。
死後の世界があるとするならば、すでに亡くなられた方々が、安らかであることを祈っています。

差別は、人を殺しえます。
直接殺すこともあれば、じわじわと時間をかけ、その人を死に至らしめることもあります。どちらも同じ殺人です。
違いは、前者は殺人罪に問うことができ、後者はできないということだけでしょう。
その人が生きてきた人生を、一瞬で否定するという殺人であることに変わりはありません。

わたしは歌人であり、俳人であり、DTPデザイナーです。
主に文学を通じて、表現に携わっています。
表現はときに、人を殺しうる凶器になりえます。
関東大震災の朝鮮人虐殺も、ホロコーストも、ルワンダ虐殺も、はじめは表現(言葉)から始まったことを忘れてはいけません。
だからこそ、差別表現に対して、表現者の立場から批判します。

また、トランスジェンダーの人権は、普遍的人権となんら変わりありません。
人権は道徳や思いやりの問題ではありません。
トランスジェンダーの人権を守ることは、シスジェンダーの人権を守ることと同時に成立します。
同時に成立する、というより、同時に成立しなければならないものです。

いま、このひどい差別の中で生きているトランスジェンダーの方々(とりわけ若者たち)にわたしが言えることはそう多くはありません。

  • もし、あなたが孤独に感じているのであれば、あなたはひとりではありません。
  • もし、あなたが生きていく価値を感じられなくても、あなたはあなたであるだけで価値があります(これを内在的価値といいます)。
  • もし、あなたが困難な場面に直面しているのなら、逃げることは怖いかもしれませんが、逃げることは自分を守る選択として尊重されます。

誰ともわからないわたしに言われても……と思うかもしれません。
ですが、これは「この差別に苦しみ、今をどうにか生き延びているわたし」からの言葉です。

わたしはあなたに連帯します。
あなたは一人ではない。
あなたは孤独ではない。

2024.11.20 トランスジェンダー追悼の日
音無 早矢

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